JRA賞になって以降の年度代表馬を辿る(其の肆)-オグリキャップ(1985.3.27)-。

オグリキャップ 牡 芦毛 1985.3.27生~2010.7.3没 三石・稲葉不奈男氏生産 馬主・小栗孝一氏→佐橋五十雄氏→近藤俊典氏 笠松・鷲見昌勇厩舎→栗東・瀬戸口勉厩舎

オグリキャップ(1985.3.27)の4代血統表

ダンシングキヤツプ
芦毛 1968.2.5
種付け時活性値:0.00
Native Dancer
芦毛 1950.3.27
Polynesian
黒鹿毛 1942
Unbreakable 1935
Black Polly 1936
Geisha
芦毛 1943
Discovery 1931
Miyako 1935
Merry Madcap
黒鹿毛 1962
Grey Sovereign
芦毛 1948
Nasrullah 1940
Kong 1933
Croft Lady
栗毛 1958
★Golden Cloud 1941
Land of Hope 1950
ホワイトナルビー
芦毛 1974.6.17
仔受胎時活性値:0.50
シルバーシヤーク
芦毛 1963
種付け時活性値:0.50
▲Buisson Ardent
栗毛 1953.2.21
Relic 1945
Rose o’Lynn 1944
Palsaka
芦毛 1954
Palestine 1947
Masaka 1945
ネヴアーナルビー
黒鹿毛 1969.2.27
仔受胎時活性値:1.00
★ネヴアービート
栃栗毛 1960
種付け時活性値:0.00
★Never Say Die 1951.3.26
Bride Elect 1952
センジユウ
黒鹿毛 1963.3.29
仔受胎時活性値:1.25
ガーサント
鹿毛 1949.4.5
種付け時活性値:1.25
スターナルビー
黒鹿毛 1957.4.22
仔受胎時活性値:1.25

<5代血統表内のクロス:Nasrullah4×5、Nearco5×5>

オグリキャップ(1985.3.27)の0の理論的総括
母父 祖母父 曾祖母父
★ダンシングキヤツプ
(Native Dancer系)
シルバーシヤーク
(Relic系)
★ネヴアービート
(Never Say Die系)
ガーサント
(Hermit系)
形相の遺伝 料の遺伝 牝系 母の何番仔?
ガーサント
(Bubbles)
4.00 半妹オグリローマン
(No.7-d シユリリー系)
6番仔
(5連産目)

*

第33回有馬記念(GI)の結果(上位5頭。馬齢は現年齢表記に合わせる)


馬名 性齢
騎手 走破
時計
着差 上り
3F
馬体重
[前走比]
調教師
1 10 オグリキャップ 牡3 55 岡部幸雄 2:33.9    35.6 492
[-2]
瀬戸口勉 2
2 11 タマモクロス 牡4 57 南井克巳 2:34.0 1/2 35.0 448
[-2]
小原伊佐美 1
3 5 サッカーボーイ 牡3 55 河内洋 2:34.3 1.1/2 35.3 454
[-4]
小野幸治 3
4 1 ランニングフリー 牡5 56 菅原泰夫 2:34.4 クビ 36.2 452
[+6]
本郷一彦 10
5 8 メジロデュレン 牡5 56 村本善之 2:34.6 1 35.8 458
[+8]
池江泰郎 7

昭和最後の年となった1988年。オグリキャップが天皇賞・秋(GI)、ジャパンカップ(GI)を共に0秒2差、1と4分の1馬身だけ後塵を拝していた相手が、1年先輩の芦毛馬タマモクロス(1984.5.23)でした。そんなタマモクロスの引退レースが第33回有馬記念。ここで勝てなければ、ずっとタマモクロスに勝てなかったと言われてしまう。覇気の塊だったオグリキャップ、「三度目の正直」となるこの一戦で、ようやく一矢報いたのでした。

*

第6回マイルチャンピオンシップ(GI)の結果(上位5頭。馬齢は現年齢表記に合わせる)


馬名 性齢
騎手 走破
時計
着差 上り
4F
馬体重
[前走比]
調教師
1 1 オグリキャップ 牡4 57 南井克巳 1:34.6    47.2 496
[0]
瀬戸口勉 1
2 4 バンブーメモリー 牡4 57 武豊 1:34.6 ハナ 46.9 500
[+4]
武邦彦 2
3 11 ホクトヘリオス 牡5 57 柴田善臣 1:35.3 4 46.9 468
[+4]
中野隆良 3
4 6 ルイジアナピット 牝4 55 岡潤一郎 1:35.6 2 47.4 428
[-10]
中村好夫 7
5 15 サンキンハヤテ 牡5 57 田島信行 1:35.8 1 47.0 434
[-6]
橋口弘次郎 14

関西テレビの中継では「負けられない南井克巳!譲れない武豊!」という、杉本清アナウンサーの名文句がゴール後に発せられた一戦。直線、先を行くバンブーメモリー(1985.5.14)と武豊騎手の姿からは、どう見ても届くはずがない感じだったのに、結局最後は内から「ハナ」だけ差し切ってしまった、オグリキャップと南井克巳騎手(現調教師)。なんという勝負根性。

オグリキャップの強さにしびれるこのレース、ぜひ動画をご覧ください。JRAも良い仕事をしていて、YouTubeのJRA公式チャンネルでは、グレード制導入後のGIレースについて、全レースの動画をアップしてくれています。多謝。

*

第9回ジャパンカップ(GI)の結果(上位5頭。馬齢は現年齢表記に合わせる)


馬名 性齢
騎手 走破
時計
着差 上り
4F
馬体重
[前走比]
調教師
1 2 ホーリックス 牝6 55 L.オサリバン 2:22.2世界
レコード
47.9 492
[不明]
D.J.オサリバン 9
2 3 オグリキャップ 牡4 57 南井克巳 2:22.2 クビ 47.6 496
[0]
瀬戸口勉 2
3 14 ペイザバトラー 牡5 57 C.マッキャロン 2:22.7 3 47.2 460
[不明]
R.フランケル 6
4 6 スーパークリーク 牡4 57 武豊 2:22.7 クビ 48.1 524
[+4]
伊藤修司 1
5 8 ホークスター 牡3 55 R.ベイズ 2:22.9 1 48.8 472
[不明]
R.マッカナリー 3

オグリキャップが敗れたレースではありますが、彼を語る際には、やはりこのレースを外す訳にはいきません。上述のマイルチャンピオンシップからのGI連闘で挑んだ、このレース。

元号が昭和から平成に変わった1989年、第9回ジャパンカップは芝12F2分22秒8というワールドレコードを持っていたホークスター(1986.2.19)の参戦もあり、世界の強豪と日本馬のスピード比べも楽しみとされました。

けれど、まさか芝2400mの世界記録が叩き出されようとは、戦前、誰が想像したでしょうか。いえ、サスガに誰も想像だにしなかったのではないでしょうか。

第9回ジャパンカップ(GI)の1F毎のラップタイムとラップの累計タイム
1F毎の
ラップ
13.0-11.1-11.5-11.4-11.5-12.0-12.0-11.6-11.7-12.2-11.9-12.3
ラップの
累計タイム
13.0-24.1-35.6-47.0-58.5-1:10.5-1:22.5-1:34.1-1:45.8-1:58.0-2:09.9-2:22.2

ジャパンカップ戦前まで4連勝中だったイブンベイ(1984.3.22)が阿呆みたいにブンブン飛ばした結果、1800mの通過が1分45秒8と当時の日本レコードよりも速く、2200mの通過は現在の日本レコードと同じ2分9秒9というラップになっています。そうして、ゴールに辿り着いてみれば、2枠2頭、芦毛の満6歳牝馬と満4歳牡馬が刻んだ走破時計は「2分22秒2」。それまでの府中芝2400mのレコードが、1987年のジャパンカップ勝ち馬ルグロリュー(1984.2.18)による2分24秒9。一気に2秒7も縮めてしまった、驚愕かつ超絶の世界レコードでした。

*

第40回安田記念(GI)の結果(上位5頭。馬齢は現年齢表記に合わせる)


馬名 性齢
騎手 走破
時計
着差 上り
3F
馬体重
[前走比]
調教師
1 9 オグリキャップ 牡5 57 武豊 1:32.4レコード 35.0 496
[0]
瀬戸口勉 1
2 12 ヤエノムテキ 牡5 57 岡部幸雄 1:32.7 2 35.0 498
[-6]
荻野光男 4
3 14 オサイチジョージ 牡4 57 丸山勝秀 1:32.8 クビ 35.0 474
[-2]
土門一美 2
4 15 シンウインド 牝6 55 南井克巳 1:33.0 1.1/2 35.6 460
[-2]
二分久男 6
5 4 ホクトヘリオス 牡6 57 柴田善臣 1:33.4 2.1/2 34.6 478
[-6]
中野隆良 5

「平成の天才」武豊騎手との初コンビとなった、1990年の第40回安田記念。前年の第34回有馬記念5着からぶっつけでの挑戦でしたが、番手先行から事も無げに抜け出し、1分32秒4のコースレコードで快勝を収めました。オグリキャップは笠松から中央に掛けて1600m戦では7戦7勝の負け無し。中央デビュー戦となったペガサスS(GIII、現アーリントンカップ)、馬なりで1分34秒0を叩き出してしまったニュージーランドトロフィー4歳S(GII、現ニュージーランドトロフィー)、上述のマイルチャンピオンシップ、そしてこの安田記念を見るに付け、本質はやはりマイラーだったのでしょう。だって強すぎますもの、マイル戦のレースぶりが。

↑の0の理論的総括で示したとおり、オグリキャップの最優性先祖は、曾祖母父ガーサント。ガーサントは現役時代に14戦8勝を挙げ、その主な勝ち鞍に仏2000ギニー(現GI)、ガネー賞(現仏GI)、フォレ賞(現仏GI)、ハードウィックS(現英GII)、コロネーションS(現ブリガディアジェラードS、英GIII)、ジェベル賞(現仏GIII)と、1400mから12Fまでの距離で重賞6勝の名馬。特に仏2000ギニーは1分37秒47という当時のレコードタイムでの優勝でした。ガーサントは種牡馬として愛セントレジャー(現GI)馬Barclay(1956)、菊花賞(現GI)と天皇賞・秋(現GI)を制したニットエイト(1964.4.10)、優駿牝馬(現GI)の勝ち馬2頭ヒロヨシ(1963.4.6)&シャダイターキン(1966.3.16)、桜花賞(現GI)馬コウユウ(1965.4.15)と、距離の長短を問わない現GIレース勝ち産駒を送り込みました。そんなガーサントの競走成績と産駒成績が、そのままオグリキャップに現れているようにも思います。

なお、1分32秒4のコースレコードは、2002年の東京競馬場の馬場改修前までは、結局、破られることなく残り続けました。馬場改修後の初回となる2003年の第53回安田記念で、オグリキャップ同様にオールラウンダーの活躍を見せたアグネスデジタル(1997.5.15)が、1分32秒1のタイムを以て、ようやくレコードを塗り替えたのでした。

*

第35回有馬記念(GI)の結果(上位5頭。馬齢は現年齢表記に合わせる)


馬名 性齢
騎手 走破
時計
着差 上り
3F
馬体重
[前走比]
調教師
1 8 オグリキャップ 牡5 56 武豊 2:34.2    35.2 494
[-2]
瀬戸口勉 4
2 5 メジロライアン 牡3 55 横山典弘 2:34.3 3/4 35.1 518
[+2]
奥平真治 3
3 13 ホワイトストーン 牡3 55 柴田政人 2:34.4 クビ 35.4 454
[+4]
高松邦男 1
4 3 オサイチジョージ 牡4 57 丸山勝秀 2:34.5 1/2 35.7 470
[-6]
土門一美 5
5 1 オースミシャダイ 牡4 57 松永昌博 2:34.6 3/4 35.3 462
[0]
武邦彦 12

天皇賞・秋(GI)6着、ジャパンカップ(GI)11着と精彩を欠いてしまった、1990年秋のオグリキャップ。「サスガのオグリも限界か……」と思ったファンも多かったでしょう。けれど、真のスーパースターは、最後の最後、自身の引退レースで勝利を収めるという、最高の幕引きを見せたのでした。

第35回有馬記念の当日には、しのぎを削った好敵手の1頭、イナリワン(1984.5.7)の引退式が行われました。前年の有馬記念勝ち馬イナリワンが辿った、1989年秋の戦績も、奇しくも天皇賞・秋6着、ジャパンカップ11着。

千両役者は、暮れの大一番で鮮やかに巻き返すものなのですね。

*

時折しもバブル全盛期、泡沫の夢の中に現れた、ひたむきさの権化。

人が、彼の中に見たのは、一体何だったのでしょう。

それは、人が忘れかけそうになった、「心」そのものだったのかも知れません。

それ故に、オグリキャップ。

  

それでは、これから走る馬、人すべてに幸多からんことを。

*

[オグリキャップの主な競走成績]

  1. 有馬記念(GI)2回、安田記念(GI)、マイルチャンピオンシップ(GI)、毎日王冠(GII)2回、高松宮杯(GII)、ニュージーランドT4歳S(GII)、オールカマー(GIII)、京都4歳特別(GIII)、毎日杯(GIII)、ペガサスS(GIII)、中京盃、ゴールドジュニア、ジュニアグランプリ、ジュニアクラウン、秋風ジュニア
  2. ジャパンカップ(GI)、天皇賞・秋(GI)2回、宝塚記念(GI)
  3. ジャパンカップ(GI)

通算32戦22勝、2着6回、3着1回。

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